2007年12月17日

計画倒れ 大峯奥駆道(1)

 “計画倒れ”シリーズ、第一弾の「小辺路」に続いて、第二弾の今回は「大峯奥駆道」(おおみねおくがけみち)。

 既に、この「大峯奥駆道」に関してはカテゴリ「計画」においてこのような記事を記したが、その際、“丸投げ”に近い形で引用させていただいたのが『じゅげむガイド工房』さんのページ。
 それを引用させていただいた理由は、何よりも「詳しい」から。
 ネット上には数多くの「大峯奥駆道」に関するページはあるが、「理論面」に関する限り、『じゅげむガイド工房』のページが最も詳しい。特に、安易に他人の書いたものを借用せず、自身の言葉でまとめられている点に、好感が持てよう。
 また『じゅげむガイド工房』のリンクを辿っていけば、「理論面」だけでなく、「実践面」についても数多くの情報が得られる。
 特に、実践面で最も重要な「登山計画」。
 リンクページの下部には「じゅげむガイド工房からのご提案」という項目があり、そこを読めば、「奥駆道の踏破に必要な日数」も把握できるのだ。
 それを引用して示せば、以下の通りとなる(適宜「改行」と「説明」を加えた)。
プラン1 
コース: 熊野本宮 〜 玉置山 〜 釈迦ガ岳 〜 八経ガ岳 〜山上ガ岳 〜 吉野 (順 峰
1日目:熊野本宮 (4:45) 金剛和多 (3:20) 旧篠尾辻 (1:25) 玉置神社(計9:30)
2日目:玉置神社・玉置山 (0:45) 花折峠 (4:10) 地蔵岳 (2:15) 行仙宿避難小屋(計7:10)
3日目:避難小屋 (2:55) 平治宿 (1:00) 持経宿 (5:40) 深仙宿避難小屋(計9:35)
4日目:避難小屋 (1:30) 釈迦ガ岳 (5:15) 八経ガ岳 (0:30) 弥山・小屋(計7:15)
5日目:小屋 (3:25) 行者還岳 (3:50) 大普賢岳 (2:50) 山上ガ岳・宿坊(計10:05)
6日目:宿坊 (2:10) 五番関 (3:25) 四寸岩山 (4:05) 吉野山駅(計9:40)
( )内は、休憩時間を含まない「コースタイム」。
集合場所・時間:熊野本宮、当日朝8:00  解散:近鉄吉野駅
プラン2
コース: 吉野 〜 山上ガ岳 〜 八経ガ岳 〜 釈迦ガ岳 〜 玉置山 〜 熊野本宮 (逆 峰
1日目:吉野山駅 (4:30) 四寸岩山 (3:00) 五番関 (2:50) 山上ガ岳・宿坊(計10:20)
2日目:宿坊 (2:40) 大普賢岳 (3:05) 行者還岳 (4:00) 弥山・小屋(計9:45)
3日目:小屋 (0:35) 八経ガ岳 (5:30) 釈迦ガ岳(1:10) 深仙宿避難小屋(計7:15)
4日目:避難小屋 (5:25) 持経宿 (0:55) 平治宿 (2:50) 行仙宿避難小屋(計9:10)
5日目:避難小屋 (2:35) 地蔵岳 (4:20) 花折峠 (0:55) 玉置山・玉置神社(計7:50)
6日目:玉置神社 (1:30) 旧篠尾辻 (2:45) 金剛和多 (4:10) 熊野本宮(計8:25)
( )内は、休憩時間を含まない「コースタイム」。
集合場所・時間:近鉄吉野駅、当日朝8:00  解散:熊野本宮

 上記の登山計画は「5泊6日」となっているが、多くの人にとって、出発地へのアクセスの都合から「前泊」を余儀なくされる。
 それを考慮すれば、「大峯奥駆道の踏破に必要な日数」も自ずと明らかとなろう。
 つまり、
6泊7日

を要するということだ。

 そして、「この計画で歩けるか否か?」で、装備品から所要日数まで大いに変わってくる。
 以下、そのことについて、いくつか記しておくことにしたい。


1、最短日程
 おそらくは、上記の『じゅげむガイド工房』さんの登山計画こそが「最短日程」であり、また、日数の短さゆえ荷物の重量も減らすことが可能であるから「理想的」であるとも言えよう。山野を駆け巡ることを目的とする「トレイル・ランナー」でもない限り、これ以上所要日数を短くすることは、宿泊場所の都合から、不可能に近い。
 ただ、上述した「プラン」というものは、個人で計画・実行する「単独登山」とは異なり、「ガイド登山」であることに注意せねばならない。
 つまりは、地図を熟読した上での「ルートの選定」や、朝晩の「食事」。それに、山岳地帯へ入る上で必要とされる「諸手続き」が省かれるということ。よって、「単独登山」を行おうとする場合、それらの煩雑な作業は全て個人で行わねばならない。

 「大峯奥駆道」のような厳しい山岳地帯を目指そうという方にとって、細かな「装備品」についてのアドバイスは不要であると思う。
 以下、上記日程で歩くために最低限必要と思われる「情報」のみを。

(1)「地図」の購入
 「大峯奥駆道」自体が2,000b級の山々が連なる山岳地帯である以上、「地形図」の購入は不可欠。それと、この道を歩く人にとっての必需品になっているのが、以下の「書物」(画像は添付)。
oominemap.jpg
大峰山脈 2007年版 (山と高原地図 50)
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昭文社 2007-02
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 登山愛好家にはおなじみの、昭文社発行の「50000分ノ一」地形図。
 実際に使用した方に伺ったところ、「コースタイムがかなり的確で、計画段階から絶対に必要」ということだ。確かに、著作権の関係から地形図を使用した出版物が少ないことからも、本書は貴重な書であると言えよう。ただし、「等高線が読み取りにくいことから『地形図』(25000分の一)との併用が望ましい」、「水場の表記が不正確ではないか」といった批判もあることを伝えておく。
 なお、本書には大峰山脈へアプローチ、それと、様々な登山コースを紹介した「小冊子」(解説本)も付属。
 「大峯奥駆道」それ自体のコース説明は少ないのだが、それへと合流するための数多くのルートを紹介しているから、緊急時などに利用する「エスケープ・ルート」を検討する上で、大いに役立つであろう。

 いずれにせよ、「奥駆道、踏破」のためには欠かせない本である。

(2)登山計画書と山岳保険
 忘れられている(?)向きもあるようだが、「大峯奥駆道」を歩くには「登山計画書」(登山届)を提出する必要がある。
 「地元警察」(交番)、駅などにある「登山ポスト」に提出するのが一般的だが、詳しいこと(提出場所)は「前泊する宿」に確認しておけばよい。たいていの場合、その宿に提出することで受理されるはずだ。

 「山岳保険」。
 「団体」で加入するなら割安なのだが、「個人」で、しかも「新規」で加入する場合は「五千円程度」の出費を考えておくべき。軽いケガや体調不良ならば自力で下山することも可能であろうが、それ以上の症状に見舞われた時、あるいは天候不良による遭難を想定して、百万円程度の救助費用がまかなわれる「山岳保険」には加入しておくべきだろう。
 実はあまり大きくは報道されていないようであるが、最近の「大峯奥駆道」では少なからず、“トラブル”が発生している模様。元々、「大峯奥駆道」自体が一般の人を寄せ付けないような岩場や急坂の多い危険な場所なのだから、そこへ入山する以上は、それなりの準備というものが必要。近い将来、奥駆道の全ルートを縦走する登山者に対して、保険加入が義務付けられることになるかもしれない。

 山岳保険に関する解説と、保険会社への「リンク」。
 なお、「ガイド登山」の場合、保険未加入者の参加は認められていない。

(3)宿泊
 上記『じゅげむガイド工房』のプランに従う限り、宿泊場所は“固定”される。
 「前泊」する場合でも、『熊野本宮大社瑞鳳殿』(本宮)と『吉野山喜蔵院YH』(吉野)以外には、奥駆道へのアクセスの都合上、選択の余地がないであろう。
 行程上2回利用する「避難小屋」に関しては必要ないが、その他の宿泊施設に関しては、「事前の電話予約」が必要である。

 その電話予約の際に注意を要するのが、一つには「時期」の問題。
 『じゅげむガイド工房』内の「大峯奥駈登山についての各種情報」のページに記されているように、「宿泊施設の営業期間が限られている」という事情があるのだ。
山上ガ岳参篭所(例年) 5/3 〜 9/22   
弥山小屋 4月下 〜11/20前後

 もちろん、近くの避難小屋を利用したりテント泊を行ったりするのであれば、上記の時期的な問題はクリアされよう。しかしながら、それを行うためには2キロ程度ザックの重量が重くなることを覚悟せねばならない。しかも、奥駆道を踏破するために必要な日数が最低で7日という“長期戦”である以上、その重さは“命取り”となりかねない。
 「食事付で泊まれる」アドバンテージは、登山経験者であればよくお分かりであろう。

 もう一つ問題となるのが、「『玉置神社の宿泊」に関して。
 いくつかのガイドブックには「玉置神社、通年営業」といった記述が見られるが、ここは基本的に「参詣者と奥駆修行者のための宿泊施設」であるから、それとは関係のない「登山者の宿泊は、通常不可」なのである。ただし、例外的に『じゅげむガイド工房』のような定期的に宿泊する団体に対しては、宿泊を無条件で認めているようだ。
 それを考えれば、「玉置神社」に泊まれるかどうかは
交渉次第

である。
 この際、最低限必要となるのが「事前の電話予約」。それと、その際に指示される「登山計画書のFAXでの送信」。
 交渉に当っては、予めこれらのことを考慮に入れて行うべきであろう。

(4)その他
 熊野本宮大社から吉野まで、「大峯奥駆道」にいくつものルートがあるわけではないが、実は6泊7日で終わらせるための「明暗を分けるポイント」というべきものがある。
 以下、それらを箇条書き風に。

 一つは「ピークアタックを避ける」ということ。
 奥駆道の通っている「大峰山脈」というのは、いくつかの山の集合体である。当然、それぞれの山には山頂があるのだが、登山家の性(さが)で、それらを全て制覇しようとすると、「6泊7日で終わらない」可能性が高くなる。
 コース上、必ずしも山頂行きを避けた「巻き道の方が早い」とはいえない場所もあるが、体力的なものを考慮し、あまりピークアタックにはこだわらない方が得策だろう。

 二つ目には「修験道的発想にこだわらない」ということ。
 修験者が奥駆道に入る場合、必ず立ち寄らねばならないのが「靡(なびき)と呼ばれる修行場」なのだが、これに登山者がこだわると、体力的に大いに消耗することになる。コース上と同じ場所にある「靡(なびき)」であるなら問題はないが、ほんの少々離れた場所まで“深追い”すると、身も心も思わぬ危険にさらすこととなろう。
 たとえ「無信仰」で山に入っても、連日己の肉体を酷使していく内に、いつしか自分自身が修験者の一人になったかのような錯覚を呼び起こす──、それが「大峯奥駆道」の一つの特徴でもある。

 三つ目は「水場への往復時間」。
 季節にもよるだろうが、一日に一度は、奥駆道にある水場へと水の補給に向かうことになる。その水場がコース上にあれば問題はないのだが、これがなかなかうまく行かないようだ。「往復30分前後」離れた場所に水場があるのが当たり前で、しかも、道も不明瞭。たとえコース上に近い場所に水場があっても、それが「渇水」している可能性もあるという・・・・・・。
 それを考慮すれば、一日の行動計画の中で、必ず「水場への往復時間」を組み込んでおかねばならない。
 そのような苦労を最小限に留めておくためにも、テント泊を避け、予め宿坊や営業山小屋に宿泊する登山計画を、「大峯奥駆道」では立てておくべきであろう。


2、標準日程
 前述した『じゅげむガイド工房』のプランは「短期間」で、しかも、小屋泊まりが2回だけと荷物も軽くて済むから、「理想的な計画」である。ただ、その計画の立て方は決して『じゅげむガイド工房』の“専売特許”と言うわけではなく、実は、奥駆道を志す者の大半は、同じ計画を立てている。
 しかしながら、現実に「6泊7日」の行程で、奥駆道を歩き通すのは難しい。具体的には、6泊7日に「さらに1日余分にかかる」可能性が高い。
 ネット上に散見される「体験記」に目を通すと、以下のようなパターンが多いのだ(宿泊地名は『大峰山脈 2007年版 (山と高原地図 50)』に従った)。
順峰
・本宮町⇒玉置神社⇒行仙宿山小屋⇒テント泊⇒楊子ノ宿小屋⇒行者還避難小屋⇒山上ヶ岳宿坊⇒吉野へ
逆峰
・吉野⇒山上ヶ岳宿坊⇒弥山小屋⇒深仙潅頂堂避難小屋⇒持経ノ宿避難小屋⇒テント泊⇒玉置神社⇒熊野本宮へ

 「大峯奥駆道」を“標準的な歩行タイム”で歩いた場合、どこか一ヶ所は「避難小屋も何ない場所」で夕暮れに遭遇する可能性が高い。もちろん、それを避けるべく早朝出発で歩行時間を長くする「強行日程」を組もうとするのだが、5日以上の「長期縦走」となると、それもなかなか難しくなる
 というのも、一般登山者が「小屋泊まり」する場合、「ガイド登山」とは異なり、「自炊道具と食糧」を持参せねばならない。すると、当然のことながらザックの重量は重くなり、体力の消耗が激しくなる。その結果、日々の移動距離が短くなり、宿坊や避難小屋まで歩くことが出来ずに「テント泊」を余儀なくされることにもなるのだ。しかも、歩く場所は「大峯奥駆道」。人気のある山の縦走路とは、厳しさがケタ違いだ。

 なお、奥駆道のルート上には、キャンプ指定地(テント場)は、ない。また、前述した『大峰山脈 2007年版 (山と高原地図 50)』には「キャンプ適地」の紹介はあるものの、「水場が近くにない」場合が多いことも、問題。
 それを考えると、「テント泊」を計画に入れた場合、水場の確保も含めて、テントの設営地は予めよく検討しておいた方がよいだろう。
(ちなみに、今まではテントよりも重量が軽いという理由で「ツェルト」(ポールとフライシートを含めて1s程度)が用いられて来たが、今では「ツェルトより軽いテント」が販売されている。興味のある方は「リンク先」へ。
 実際に製品を確認したが、「結露は避けられない」ものの「フライなしで雨でも一晩は凌げる」、ということであった。)

 以上を踏まえると、「大峯奥駆道」を踏破するには「一週間前後」かかることになる。そして、“標準的”に考えれば、「テント持参で7泊8日」で計画する必要があるだろう。

 そうなると、我々が取るべき選択肢は二つ
 一つは、テント泊を基本としながら、日々の行程を短くして、無理のないペースで縦走すること。
 この方法なら、避けていたピークアタックも可能で、「大峯奥駆道」を十分堪能できよう。ただし、日数が長くかかる分「荷物が重くなる」というリスクはあるが。
 もう一つが、全行程を一度に歩かず、いくつかの区間に分けて、分割して歩くこと。
 これなら、自身の休暇をうまく利用すればいいので、計画も立てやすい。そして何よりも、荷物も軽くなり、体への負担を大幅に軽減することも出来よう。

 実際、「大峯奥駆道」の踏破を試みる者の大半は、日程を区切る「後者の方法」を採る。
 「次回」は、主に、この「後者の方法」を中心に述べてみることにしたい。


【関連記事】
特別計画 大峯奥駆道
計画倒れ 大峯奥駆道(2)



posted by moto-umi at 23:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 計画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おお!、そうか逝くのか
書く事無くてただのラーメンHPになると思いきゃ復活するわけか・・・w
ところで左のフラッシュのせいで重くなったぞここw
Posted by T at 2007年12月19日 15:55
>T様、ご無沙汰しております

>逝くのか
逝けませんw いまだに足のケガが治っておりませんし、宿泊場所の都合もありますので、またいつか、誰にも知られずに「コッソリ・・・」とヤリます。
>書く事無くて・・・
心臓を一突きするような鋭いツッコミ、どうもありがとうw
一応、「リアルタイム日記の補足」は書きますから、しばし待たれよ。
>重くなった
ヤッパリw
ブラウザをいくつか使って「表示速度」を確かめてみたが「IE」が致命的にまで遅い。「表示は一番ウマクいく」んだが。
いくら重くなったと言われても、「リラックマと熊田曜子は譲れない」からw
Posted by moto-umi at 2007年12月27日 22:58
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